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グッチ長財布アウトレット編集

 はるか遠くから裕生の声が聞こえる。その呼びかけで、ぎりぎりのところで意識を保つことができた。体の奥へ「黒曜」が流れこむのがはっきりと分かる。その部分だけリグルがもたらすものとは別の、しびれるような痛みが走った。  突然、みぞおちのあたりにいる大きな塊《かたまり》が体の中で跳ねた。 (うっ……)  彼女の体の中で、リグルが激《はげ》しく動いている。その動きは徐々《じょじょ》に大きくなり、やがて彼女の口を目指して、身をよじるように這《は》い上がっていった。  ぼとり、と巨大な青い芋虫《いもむし》がみちるの口から地面に落ちる。千晶《ちあき》は裕生《ひろお》たちに背を向け、青のリグルの方へ急いで戻ろうとした。  裕生も葉《よう》を見逃さなかった。 「葉!」  と、裕生が叫ぶと同時に、葉は口の中で自らのカゲヌシの名を呼んだ。 「黒の彼方《かなた》」  葉の影《かげ》がみるみるうちに膨《ふく》らんで、弾《はじ》けるように巨大な双頭の黒犬が姿を現した。片側は目を開け、片側は眠ったままだった。  裕生は葉の手をしっかりと握りしめている。このカゲヌシを葉の影に戻すには、裕生が彼女の名前を呼んで目を覚まさせるしか方法はない。今までにも影の中に戻ることを嫌《きら》って、何度も裕生のもとから逃げ出そうとしていた。 「黒の彼方」は地面の上でもがく青のリグルへと一直線《いっちょくせん》に駆けた。リグルは自ら機敏に動くことはできず、地面の上をのろのろと進むだけだった。  千晶が追いつく直前、地面を蹴《け》った黒犬は青い幼虫をくわえてくるりと向きを変えた。顎《あご》にはさまれたリグルは激しくもがいている。 「黒の彼方」は肩で息をしている千晶と向かい合った。  その一方で、 「お久しぶりですね」  と、葉が裕生に言う——今、彼女が口にしているのは葉の肉体をも支配している「黒の彼方」の言葉だった。裕生は無言で葉の手をさらに強く握った。あの青のリグルが倒された瞬間、葉を呼び覚まして「黒の彼方」を影へと帰すつもりだった。
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