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 思わず口元が緩む。  あんたにばかり、そうそういい事があってたまるもんですか。 「これ、誰」  振り向くと、柴野が赤い顔をしていた。 「つ、妻」 「柴野さん、け、け、結婚してるの」  波江の声は上ずって、悲鳴のような尾をひいた。 「……そう、なんだ」  頭の後ろでパイプオルガンが鳴り響いた。  大家さんが旅行中に自分を招いたのは、そういうことだったのか。それにしても、女が来るというのに、枕元に妻の写真を堂々と飾っておくとは、どういう神経なのか。 「どうしてこの写真、隠しておかなかったの? 寝室に飾っておくなんて、あんまりだわ」  寝る気で来たと、あからさまに告白しているようなものだがかまうものか。こうなってはそれどころの話ではない。本当の僕を知って欲しかった、とか、不倫であることを隠したまま関係に及ぶのは卑怯《ひきよう》だと思ったとか、こちらを思いやる言葉を言って欲しい。ところが柴野は力なく肩を落として言った。 「つまりその、忘れたんだ」  何ですってえ?! 怒りで体が熱くなった。波江は写真立てを手にしたまま寝室を出、それを冷蔵庫の中にしまった。ついでにそこに冷えていた白ワインの瓶とグラスを二つ持って寝室に戻る。波江は怒ると、行動がてきぱきするのである。 「あ、オープナー忘れてきた。柴野さん、持って来て」 「はい」  柴野は命令に従う。 「開けて」
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