louis vuittonルイヴィトン草間彌生
null
null 胃の腑《ふ》からこみあげる吐き気に促《うなが》されるように、僕は告げた。  ……もっと器用に立ち回れば、あるいは。僕は、もっと長生きできたのかもしれないけど。 「ヘンであるように、あなたは生きてきた。人を殺してしまったあなたは、その罪から目を背けて、逃げたんだ。自分は狂っている。狂っているなら入を殺しても仕方がないって。異常な人間なら、異常な行為をするのは当然だって誤魔化して、言い訳して……!  ……でも、そんなのはむかついたから人を殴ったって言い訳と同じなんです。そこにどんな正当性もない。なのにあなたは自己を正当化するために狂ったふりをして、今も、ずっと逃げている」  ……そう。  初めて人を殺して、荒耶宗蓮という人物の誘いにのった時から、白純里緒は消えていた。  狂人としてならば存在できるという理論武装をした彼は、同じ殺人鬼である両儀式を求めた。自分と同じ殺人鬼がいるのなら、自分が正当化されるから。  おかしいのは自分だけじゃないって安心できるから。 「………うる、さい」  瞳を細めて、白純里緒がこちらを見据える。  でも最後まで言わないと、ここに来た意味がない。 「……生まれた時から理由もなく殺人を嗜好してしまう式と、自分を守る為に殺人を嗜好していると思い込んだ白純里緒」  ……天然のモノと人工のモノ。  ……もって生まれたモノと、作りあげたモノ。  その違いを、口にしなければあなたが気付いてくれないのなら。 「……殺人鬼なんて呼び名は間違いだったんだ。式が抱く苦しみを、あなたは持っていない。捨てたくても捨てられない感情、その隔たりがあなたにはないから」 「…………うるさいよ、黒桐」 「だからあなたは式と同じなんかじゃない。まったく正反対の人間だ。人を殺して、その罪を自分のものとも認められない。ただ逃げて、殺人者にも殺人鬼にもなりきれない逃亡者。それがあなたの正体です、先輩」